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シンガーソングライター・大塚利恵  リンクページへ
『作詞の学校』
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第4回 「関係ない!」って言わずに、結び付けてみよう
一人の男が公園のベンチに座っていた。男は耳に(    )をさしていた。女の子がスキップしながら通りかかった。
「あの、失礼ですけど」女の子が言った、「耳に(    )が入ってますよ」。「えっ、何だって?」。「あのね、おじさん」女の子はだんだんかっとなってきた、「耳に(    )をつっこんでるわよ」。
「悪いけど」男は答えた、「聞こえないんだ。耳に(    )をつっこんでるもんでね」
(参考文献:「考える練習をしよう」マリリン・バーンズ著 晶文社)

これはいわゆるアメリカンジョークです。(    )にどんな言葉が入ったら面白いジョークが完成すると思いますか? つまり、おじさんの耳に突っ込まれていて可笑しいものは何でしょうか?(実際、たいていの物は耳に入っていたら可笑しいのですが…)
‘耳かき’や‘耳栓’じゃつまらないですよね。耳とまったく関係のない物が入っているからこそ面白いはずです。

今までいろんな人に答えてもらったのですが、わたしが特にお気に入りだったのは、‘夢と希望’という答えでした(笑)。意表を突かれた絶妙な答えだと思いませんか?
頭で考えたときには面白いと思っても、声に出して演じてみたらイマイチだったということもあります。実際大人数で反応をみながらやってみたところ、‘おばさん’‘志村けん’‘鼻’‘象’などはイマイチでした(演技力があれば面白くなるかも知れませんが…)。長過ぎる答えも、声に出すとテンポ感が落ちて面白くなくなるようでした。
逆に‘ウニ’は結構ウケていました。耳に対して大きさがリアルで、想像しやすいせいでしょうか。それにしても痛そう!

ちなみに元は、‘バナナ’がおじさんの耳に入っている、というジョークです。 ‘耳’と‘バナナ’。このようにまったく関係のない意外なもの同士が結びついた時、笑いや感動が生まれるのだと思います。意外性のない漫才じゃ笑えないし、予想通りの展開のドラマじゃ泣けませんよね。

作詞する時も、『何かと何かを繋げる』考え方はとても大事です。
今回はそれを実践してみたいと思います。

1.《夜》をテーマに。
まず夜を連想させる言葉を集めます。
[A]
月 流れ星 オリオン座 闇 ネオン 眠る ベッド 羊

これらの言葉、または‘夜’そのものを使ってフレーズをつくってみます。
○ 眠らない街角にネオンが灯る頃
オリオン座が少し風に揺れた
○ すました三日月にそっと語りかける
○ 夜はいつも孤独を連れてくる

工夫すれば充分いい歌詞になりますが、これだけだと、ありきたりにもなりやすいものです。
では、次にちょっと発想を変えて、夜と直接関係のない言葉を書き出します。夜というテーマは一度忘れて下さい。本や辞書を開いて、目についた言葉を抜き出すと簡単です。

[B]
トラック タンス コーヒー レコード 泳ぐ 満ち潮 崩れる 爽やか 山
ゴミ箱 パラシュート ブランコ インド洋 神様 笑う 用水路 交差点

そして、[A][B]からひとつずつ言葉を選んで、結び付けてフレーズをつくります。感覚としては、ひとつの絵の中にふたつの言葉(イメージ)を描き入れるつもりでやってみてください。
流れ星コーヒーで乾杯!
の数がわからなくなって、レコードに針を落とした
暗闇は嘘を葬るゴミ箱じゃない
トラックの音と三日月だけの
パラシュートの真ん中に降り立つ

距離があるふたつのイメージが結び付くと、何かストーリーが始まりそうな気がしてきませんか? また、個性的な歌詞が簡単に書けそうですよね。

さらに、できたフレーズの続きを書いてみます。
暗闇は嘘を葬るゴミ箱じゃない
汚れた靴は汚れたまま朝日にさらされ
確実にめくられていく、真実の1ページ

トラックの音と三日月だけの夜
 身も心もただ吸い込まれて行く
 他に必要な物なんて、今は何もない。

夜に直接関係ない言葉が、歌詞の世界をずいぶん拡げてくれると思いませんか?

2.《雨》をテーマに。
1と同様に、雨をテーマにしてみましょう。

[A]雨を連想させる言葉達(‘雨’そのものを含む)
傘 降る 濡れる 雨やどり 水たまり 長靴 雨音 雨粒

[B]雨に直接関係のない言葉達
ブレスレット ピアノ コックさん ノラ猫 電柱 断る パソコン 風船
高層ビル 呆れる ガソリン 観覧車 神社 ショートケーキ 飛び回る

[A][B]からひとつずつ言葉を選んで、結び付けてフレーズをつくります。
ノラ猫とふたり 雨やどり
高層ビルはただだまって濡れ続けていた
観覧車の窓にのカーテン
雨音に掻き消されるピアノの音色
○ 大きな風船が割れたような
ショートケーキ

『雨とショートケーキ』なんてとても短くてシンプルですが、インパクトがあって曲のタイトルになりそうですね。

ではできたフレーズの続きをいくつか書いてみます。
ノラ猫とふたり 雨やどり
知らない傘が助けに来るのを
それぞれ夢見て寄り添った

観覧車の窓に雨のカーテン
15分間の作られた夢の中
そっと触れた指先の確かな温もり

雨とショートケーキ
甘い思い出だけ舌にくるめて
「もう泣かない」と呟いた 日曜の午後

たとえば憂鬱な雨の日に、わくわくするような雨のフレーズをつくって、鼻歌を歌ってみるだけでも楽しいですよ。ノラ猫や観覧車やショートケーキなど、いろんなものと結び付けて音楽(歌詞)の一部になることで、「ただの雨」が「ドラマティックで特別な雨」に変わります。そうやって日常の中にドラマ性を見出せると、毎日がいきいきしてくると思います。他にも、朝、夏、花、恋など、好きなテーマで気軽にチャレンジしてみてください♪


作者プロフィール
名前: 大塚利恵
大塚利恵
職業: シンガーソングライター

1976年 茨城県生まれ。
東京音楽大学作曲科・映画放送音楽コース在籍中、アンティノス・レコードからメジャーデビュー。アルバム2枚、シングル6枚をリリース。コニシスエンタテイメントにレーベルを移した後、ピアノの弾き語り中心のライブ活動を展開。
2003年 コニシスエンタテインメントより、3rdアルバム『スミレ』 をリリース。
2006年 3月10日、4thアルバム『味彩遊園』 発売。
現在、作詞・作曲家、ピアニストとしても活動中。
≪代表作品≫
●王様/Album『いとしのオイラ・しろあんこ伝説』(2003年)
→ Chorus
●Kinki Kids/Single c/w『コ・ハ・ル・ビ・ヨ・リ』(2004年)
→ Chorus
●Going Under Ground/Single『VISTA /ハミングライフ』(2006年)
→ Chorus
●TAMAMIZU(ex.CASCADE)/Album『マーブル』(2004年)
→ Chorus
●TAMAMIZU/Single『犬の生活/ホテル・スイート・
ハイビスカス』(2004年)
→ 作詞
●sona(ユンソナ)/『はちみついろ』『ハッピー・ドライブ』
(Single 『会いたい』収録 2004年)
→ 作詞
●sona(ユンソナ)/『song bird』(Album『song bird』収録 2005年)
→ 作曲
●オムニバス
『春なのに』(Album『GAL盤U』 収録 2005年)
『春なのに』(Album『失恋ソングス 卒業編』 収録 2005年)
→ Vocal
●大塚利恵/1st『Oh Dear』(1998年)、2nd『東京』(2001年)、
3rd『スミレ』(2003年)、4th『味彩遊園』(2006年)
→ 作詞、作曲、Vocal、Piano
≪主なサポート≫
●朝澄けい(元宝塚歌劇団星組男役トップスター)
→ Piano (ディナーショー)
●Going Under Ground
→ Chorus (ライブ)
●sona(ユンソナ)
→ Piano (愛地球博でのライブやイベントなど、多数。)
●松浦亜弥
→ Piano (コンサートツアー2006春『OTONA no NAMIDA』)

 

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