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『NYステージエンターテイメント』
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第4回 「初のひとり芝居」

暖かい日が増えてきました。みなさまお元気でお過ごしでしょうか。

初のひとり芝居画像1さて、今日は予告どおり、初のひとり芝居のお話をします。ひとり芝居と言っても、リーディング形式のもの。NYでは、この「リーディング」が頻繁に行われています。リーディングとは、まさに読んで字の如く。「台本を読む」のです。私が読んだ台本は、既に出来上がったものではあるけれど、本公演に向けて手直しが必要な箇所はあるか、わかりづらいところはあるか、などを、ディレクターやプロデューサーが客観的に考え、またお客様からフィードバックを頂くためのものでした。
私は舞台上にあるイスにひとりで座り、台本を譜面台に置いて読みます。もちろん、役者が読むのですから、ただ読むわけではありませんよ。

この企画は、グループの立ち上げ当時から私がお世話になっている、NYを拠点に活動を続けている非営利団体「Theatre Arts Japan」(→http://www.theatreartsjapan.org/) ちなみに、3月にも彼らの公演に出演します。そのことは次回お話ししますね。)によるものでした。3日間で3作品のリーディング。つまり、1日1作品の上演、ということです。私が出演させていただいた作品は、ひとり芝居をこれまでにもいくつか書いているRick Fosterによる「Gunpowder Man」で、演出は山添裕香子さん。お話は、1850年頃から1882年までの中国、カリフォルニアを生き抜いた、少数民族のハッカ族(実在する少数民族)の女性、Little Tigerの人生です。ハッカ族であるために中国で虐げられ、双子の弟、Happy Tiger、とアメリカ西部に逃げ渡り、弟と生き延びるために女性であることを隠しながら、アメリカ横断鉄道建設現場で火薬(Gunpowder)を扱う仕事をしたLittle Tiger。彼女自身は実在の人物ではありませんが、史実を元にして書かれているので、たくさんの実在の人物が登場します。

役者がお客様の前で台本を読むということは、芝居をするということです。限られた時間で台本を読み込み、的確なキャラクターチョイス(すべてのセリフの裏の意図を明確にする作業、各役に具体性をもたせる作業)をするのです。ちなみに限られた時間とは、私のリハーサル回数が3回だったことを意味します。
この仕事を通して私はたくさん、たくさんのことを学び、経験することになりました。例えば、ひとりで1時間20分(休憩なし)お客様の前で台本を読むという集中力を持続させることの難しさ。また、お客様に集中していただくための存在のあり方の難しさ。それは、私の存在感自体であり、演技力であり、英語力であり、役者としての華でもあり。でも何より私が苦労したのは、このお芝居がひとり芝居でありながら、登場人物がとっても多いことです。主役のLittle Tigerのほかに、弟のHappy Tiger、そのほかの家族、アメリカへの航海中に出会う海賊、鉄道建設時に一緒に働く仲間やライバルのアイルランド移民たち、と30人ほど出てきます。でも、出演者は私ひとりです。そう、私はひとりで約30人の役を演じることになったのです。

初のひとり芝居画像2最初に台本を読んだとき、この仕事を引き受けなきゃよかった、と正直思いました。ひとり芝居が初めてなら、30人のキャラクターを一度に演じるのも初めてでしたから、とても私の手には負えないと怖くなったのです。でも、いまの私の演技力と英語力を考えたら、30人それぞれを演じ分けるのは不可能だと思ったので、Little Tiger とHappy Tigerのみはキャラクターをしっかり作り上げ、残りのすべての役は、演じ分けるのではなく、最低ひとつ、明確な特徴を設定したのです。例えば、Little Tigerのお母さんには私の実の母を当てはめ、彼女を心いっぱいに感じたうえで、彼女の声をまねました。また、サンフランシスコに到着して鉄道の仕事を斡旋する中国人役は、昔一緒に芝居をした演出家を当てはめ、彼の手のクセを必ず使いました。つまり、それぞれの役が別人であり、Little Tigerではない、ということがハッキリすればいいのです。これはとても興味深い作業でした。

公演は好評のうちに無事に終わりましたが、公演後私が実感したのは、限られた時間内で、迷いのない、明確かつ的確なキャラクターチョイスをすることの難しさでした。リハーサル時間が短いわけですから、ディレクターとじっくり役を作り上げることはできません。役者自身が責任を持って、経験とテクニックと勘をもとにチョイスをするのです。この作業は、間違っていても構いません。なぜなら、あくまで「リーディング」なのですから。それよりも、明確かつ的確なキャラクターチョイスによって、セリフやストーリーを具体的に、そして確実に、お客様に理解していただくこと、納得していただくこと、信じていただくことが大切なのです。
本番ギリギリまで、私には迷いがありました。このセリフの運び方であっているのか、このキャラクターの言いたいことは何なのか。しかし、本番を終えた後にわかったのです。私が私を信じるしかない、ということを。私が、自分を信じてすべてを選択し、芝居をするしかないのです。お客様を前にした本番で、自分の選択に「自信」をもって演じることで、お客様に「信じて」いただけるのです。しかし、これは先にも言いましたが、経験とテクニックと役者としての勘に基づくものですから、とても難しいこと。結局私はその3つすべてが力不足だと感じたんですけどね。はぁ…。
学ぶことの多い環境が与えられる毎日に心から感謝しながら、今日は終わりにしたいと思います。最後まで読んでくださってどうもありがとうございました。またね。

 


作者プロフィール
名前: 保科由里子(ほしな ゆりこ)
職業: NYステージパフォーマー

1975年生まれ。日本大学芸術学部音楽学科声楽専攻を卒業後、役者を目指し渡米。
以来、数々のオフオフブロードウェイの舞台や、インディペンデントフィルムに出演。2005年にはTheatre Arts Japan「紙風船」での好演がNYタイムズ紙に載る。
2002年からは自らのプロデュースによる「One Woman Musical Comedy Cabaret Show」を開始、NYで 唯一の日本人キャバレーパフォーマーとしても活動中。

 

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